Q ひでみーるさんはいつから芸人をめざしていたのですか?
ひでみーる はっきりと覚えていませんが小さいときからです。当時のテレビで流行っていた、お笑いバラエティ番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』をかかさず見ていて、そのときの僕は「志村けん」にもう夢中でしたね。おもしろいことがかっこいいんだと、テレビを見ていた幼い僕はそんなふうに思っていましたよ。僕のなかでは「志村けん」はコントの神様なんです。ウルトラマンとか、仮面ライダーだとかになりたいと周りが言っているなかで、なりたい職業が「志村けん」でした。
●ひでみーるさんは「志村けん」をめざしていたのですね。
ひでみーる そういうわけじゃないですけれども……。僕は漫才をやりたいので。
●すみません、漫才とコントの違いを教えてください。
みつお 漫才はセンターマイクを一本立ててしゃべる。コントは衣装を着て演じます。
●ありがとうございます。スクランブルエッグさんはトークで笑いをとりたいのですか?
ひでみーる 演じることよりもしゃべりたくて、おしゃべりが好きだからですかね。もちろんコントのネタも持っていますが、やっぱり、話すことが楽しいですよ。
●例えばこうやって話をしているときや、漫才のネタを考えたりするとき、「オチ」はどう考えていますか?
ひでみーる うーん、えっとね。話がおもしろいか、おもしろくないか。オチをつけるか、つけないか、そんなこと僕にとってはどうでもいいんですよ。その場の流れというか、相手との話をどう広げるか、どうやって盛り上げるかを考えています。
●なるほど。話し相手が、みつおさんなのですね?
ひでみーる はい。どれだけ話をしても飽きません。みつおだから、話せるんです。
●うらやましいくらい仲が良いですね!ケンカはしないのですか?
ひでみーる そりゃあ、ありますよ! 小さいことばっかりだけど。漫才中に言葉を間違えたり、ネタを飛ばしたりとか。でも結局、それは、がんばっていればカバーできると思うんです。だから、その、僕のがんばりが足りないなんだなっていうことなんですよ……。相方って、僕の鏡なので。
みつお メモっておいたほうがいいっすよ、ゆかまきりさん。
ひでみーる やかましいわ! フフハハハッ。おまえだわ、みつお! メモっておいたほうがいいですよ、なんて……。ハハハハッ。
●ハハハッ、はい、メモりますメモります。スクランブルエッグさんは自然な流れを大事にしているのですね。
ひでみーる だって、お客さんが見たこともない、知らないヤツが突然出てきて三分間で笑いをとり続けるんですよ? ボケもツッコミも自然の、自分の内から本当に『なにやってんだよ!?』と、思わないとお客さんには伝わらない。だから、何度も何度も同じ漫才を重ねて、ようやく一つのネタが完成するんです。
●ということは、一つのネタでも毎回違ったオチや、流れになるのですか?
みつお そうですね。毎回じゃないですけど、違うかなぁ。ネタが固まったという感覚ができるまでは、かなりの時間が必要なので。
●想像がつかないくらいの時間が、かかっているのですね。そうやって、完成した漫才を実際にやったとき、「ボケやツッコミがお客さんに伝わっていない」と感じたことはありますか?

ひでみーる ありますあります。全然、お客さんに伝わっていないことありますよ。おもしろこと一つ、思いついたけど、これをどうやって伝えようかと考えて練って、やっとできた作品をお客さんに見せたら……。全然違うというか、ネタの意味がわかってもらえていないというか。
みつお うんうん、そうだね。同じ三分のなかでネタをやっていて、めちゃめちゃいい感じにウケていたのに、いきなり、ストーンって落ちていく。ほんとに、ストーンって静かになっていて。フハハハ、同じお客さんで、ずっとネタを見て笑っているのに、そこのボケだけストーン……。まったく、伝わっていなんだなというレベルだよな?
ひでみーる ハッハッ、もはやスベッたという感覚じゃない。「あ、伝わらないのね。このボケ」って、悟ってしまうくらい。そういうときこそ二人で「最高だなっ!?」と、伝わらないもどかしさで、おかしくてゲラゲラ笑っていますよ。ハハハハッ、お客さんからしたら訳わからないですよね。ほんと、目の前に座っているお客さんはこんな顔してますよ。

みつお その、後ろに座っている人は、おそらくこんな顔で。

●ウハハハ、えっ? ハッハハッハハハハハ!
ひでみーる・みつお ハハハハ、ヒッヒッヒッヒッ!
●もう、笑っちゃうじゃないですか。ハハハ、なんの話をしていましたっけ? えっと、ネタがお客さんに伝わりにくいときもあるのですよね?
ひでみーる はい。でも、そこで一つ安心できるのは、お客さんは、ノリで笑っていたのではなく、ちゃんと聴いてくれていたんだなと、わかるんです。
みつお そうね。ちゃんと話を聴いて、おもしろいと思って、笑ってくれていたんだってね。
●なるほど。そう捉えることができるのですね。
ひでみーる はい、僕らはそう認識しています。
みつお 「確認のボケ」みたいな。フハハハ。